読んだ本×1冊

  • コニー・ウィリス『リメイク』(271p)
    • 〜P271。読了。でも最後の40ページは映画ネタの解説なので、実質230ページくらいの本です。
    • 映画オタク・トムと、フレッド・アステアと踊ることを夢見ている少女・アリスのラブストーリー。
    • でもアリスはアステアと踊ることは絶対にできない。というのは、アリスが生まれた年にアステアは死んでいるから。舞台は2005年で、物語中のハリウッドは、過去の映画を完全にデジタル化し、それらを自由に加工できるようになっていて、過去の名作のつぎはぎや「フェイス」と呼ばれる顔の張り込みだけを使ってリメイクを生産しており、もはや実際には映画を撮影していないという設定なのです。この設定がすばらしい。実際にはならないだろうけど、実際のハリウッドにもある程度そういう傾向があって、そんな未来も想像できないこともないという上手くバランスの取れた設定。あんま関係ないけど、今の日本の歌謡界はこの小説のハリウッドと同じような状況にあるね。雀荘で有線から流れる糞カバー曲とノータリンソングのエンドレスループを聞いてるとことさらそう思う。新潟アンダーグラウンドシーンマジファック。コトシノーハルハドコイコウカー
    • ミュージカル映画がこの映画の中心にあるわけだけれど、大方のミュージカル映画がハッピーエンドに終わるのと違い、このお話はほろ苦く終わっている。終盤のトニーの「オリジナルより出来のいいリメイクもあるからね」というセリフはそれまでの流れが頭にあるとしみじみ心にしみる。
    • 短い分量に上手くシンプルにまとまってるけど、そのシンプルさの分「コニー・ウィリスの小説」としては物足りないかな。やっぱりコニー・ウィリスの小説というと長大で読み応えがあるものというイメージがある。
    • そして、なにより特筆すべきは映画ネタでしょう。分量・濃度ともにごっつすぎだが、なによりネタの使い方がうまい。自分の映画ネタの理解度は、「出てくる映画名・俳優名にかろうじて見覚えがあるが、顔やキャラクター、セリフに関してはよく分からない」くらいの感じでしたが、膨大な映画ネタが邪魔にならない程度には楽しめた。この映画ネタが全て分かる人*1は生涯ベストものの感動を得られる、のかもしれないぞ。あるいは。
    • 7点。やはりプロットがあっさりしすぎているのが難点。500ページくらいの大作でも良かったですが、このネタの濃度で500ページは読者も作者も死ぬね。
    • 次に読むのは古川日出男『アラビアの夜の種族』1巻(277p)。英題(?)がカッコいい。"THE ARABIAN NIGHTBREED"!

*1:でもそんな人は全人口の0.005%くらいしかいないんじゃないかな