読んだ本×2冊

  • 伊藤計劃『ハーモニー』(354p)
    • 〜P354。読了。
    • 超高度管理社会SF。よくあるネタなので、読んでるうちにオチの選択肢は絞れてくる。さらにいえば『ハーモニー』という題名もオチのヒント。よって、期待点は自ずと描き方の鮮やかさ・美しさになってくる。
    • この小説は人間たちがユートピアに旅立つほうの結末で、そのような場合ユートピアの病的な美しさが作品の魅力になると思うんだけど、その後の人間たちが作る世界の描写が少なくて残念。これだけだと、人間がパーフェクトな管理社会に飲み込まれてしまうという敗北の物語でしかない*1ような気がする。少なくとも自分はそう受け取った。
    • 論理展開も、結構ありがちだった気がする。人間の感情やら意思決定やらも突き詰めていえば化学現象に帰着できるという立場に立てば、人間の意識というものはなんら特別なものじゃない、意識とか感情とかいらねーじゃん、という見方ができるのは知ってる。でも、俺はそんなものを知りたいんじゃなくて、そういうカスみたいな意識というものに、人間はなぜどうしようもなくしがみつかざるをえないのかということこそを知りたいんだよ。これは漫画を含めた全ての書物や映画やアニメなんかに対して求めていることでもある。
    • etmlに関して。未来において変わってしまった文書の記述方法を表現していると思ってすげーことするなと最初は思ったけど、最後の補足を読むとそんなこともなかった。
    • 同じようなテーマの作品として思いついたのは山田芳裕の『しわあせ』。『しあわせ』はここまで重い展開ではなかったけど、羊のように穏やかな人々の内的な規範から成立している健康な社会、その社会に反発する主人公という見立ては一致している。一致していないのは(ストーリーなんかはもちろんだけれども)そのような社会の人々への作者の眼差しでしょうな。『ハーモニー』では社会の構成員を、画一的、脅迫的で弱い人のように描いている。一方の『しわあせ』では牙を抜かれた人たちへのある種の愛情や憎めなさを織り交ぜながら描写している。『ハーモニー』では社会の人々がほぼみんなWatchMeという健康維持システムを体にインストールして健康維持を「外注」しているということへの批判が話の中心にあるからそういった描き方をしているという事情はあるけど、単純に未来観・人間観だけ比較したら『しわあせ』の方が好みだな。
    • 6点。『虐殺器官』もそのうち。メタルギアもそのうち。
  • ジョージ・R・R・マーティン王狼たちの戦旗』2巻(363p)
    • 〜P68

*1:本当は生府に所属していない一部の人間が意思を持つ人間として生き残るんだけど。あまりそこには触れられてなかった気がする。