読んだ本×1冊
- ジョン・アーヴィング『ガープの世界』上巻
- 〜P411。読了。
- 文章自体の諧謔風味が心地よくてすらすら進む一方でつかみ所がないなあと思いながら読んでいたが、
どうして人は、「こっけい」であっても、同時に「まじめ」であることができるのだということが理解できないのだろう?(中略)人間以外の動物は自分を笑いの対象とすることができないし、そしてガープは、笑いとは同情に関係するものであり、人間にはいよいよ必要なものであると信じていた。
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- という一節に出会って読みにくさの正体をつかめた。この小説では「こっけい」と「まじめ」が区別されていない。悲劇にユーモアが、ユーモアに悲劇が意識的に混ぜられている。この小説はまさに引用した一節で言われているような精神から書かれている。アーヴィングはヴォネガットに小説を習ったことがあるらしいけど、その辺の作風は師匠と同じですね。もう一つ言えば全盛期*1のしりあがり寿も同じ。一つ言っておくと、全盛期のしりあがり寿の作風はその点においてはアーヴィングより先鋭的なもので、古今のコメディライターの誰よりも優れていると思っている。
- こういった認識は小説家の肌で感じる感覚としては決して新しいものではなかったかもしれないが、30年前のアメリカという土地では「なんでみんな分からねえんだ!」とガープ(≒アーヴィング)が苛立ちを覚えるくらいには特殊な認識だったんだろうなあということは想像にかたくない。
- 8点。次に読むのはもちろんジョン・アーヴィング『ガープの世界』下巻(全442p)だ。
*1:第一変換候補は「前世紀」だったけど、あながち間違ってはいない。