読んだ本×1冊

  • 長嶋有『ねたあとに』
    • 〜P333。読了。
    • 暑い東京を避けて涼しい別荘で遊ぶ。筋を言えば本当にそれだけのすばらしい小説です。
    • どんな遊びなのか。紹介すると、「競馬(麻雀牌を使ったゲーム)」「顔(サイコロを使ってモンタージュ式に人間を作っていくゲーム)」「それはなんでしょう(質問を考え、終わりの部分だけを聞く。『三億円当たったらどうする?』なら『どうする?』。皆が答えたあと前半部を発表して笑うゲーム)」「ダジャレしりとり(最後の2音を引き継いで、ダジャレでしりとりする。「大豆」に「伊豆の踊り子」と答えてはいけない。「イズユニバース」などと答えよう。徹夜のテンション末期向けのゲーム)」とか。
    • いずれのゲームにも言えることは、誰もが幸せになれるゲームであること。麻雀牌を使って麻雀をしないのが非常に象徴的。ゲームによって得られる得の大きさより、負けたときの損の小ささを重視して遊びが選ばれている。あと楽しくなるか否かがプレイヤーのセンスによるところが大きいゲームが好まれているのもポイント。どのゲームも、楽しくなり、かつ遊ぶ度に楽しさが深まるように設計されている。
    • TMRの遊びは麻雀とカラオケの2択と言われていたのも今は昔、最近は麻雀の1択になりつつある。この小説を見習って、我々も「麻雀しかすることねーなー。でも麻雀楽しいしいいか」じゃなくて一度真剣に遊びについて考えた方がよいのかもしれない。
    • 遊びをするのに強迫的・中毒的じゃないのも良い。あくまで遊びは遊び。余暇の暇潰し以外の何物でもないということをみなが共通認識として持っているのが心地よい。
    • ゲームが知れば知るほど楽しめる物であるのと同様に、山荘の暮らしもまた知れば知るほど楽しめる物として描かれている。自分が環境に馴染んでいく楽しみ、なんてマニアックな種類の楽しみは、作品の主題としてなかなか描かれないけど、この小説はまさしくそれについて書いている。
    • ジャージの二人』と同じような小説だけど、妻との別れ話とかの不純物(?)が無い分、山荘暮らしの楽しみの描写が純化された印象。長嶋有の小説で一番好きです。8点。9点付けたいくらい。
    • 次に読むのはウラジーミル・ナボコフ『ロリータ』で。本文300p。訳文古くて文字小さくて読むのに苦労しそう。