ディアスポラ2周目読了

この小説の本質は「なぜあなたがたはこれほど遠くまで来たのか? なぜ自らの同胞を置き去りにしてきたのか?」という冒頭の問いに凝縮されている。仲間と離れたくないのに遠くに行きたくなってしまう人間の不思議と素晴らしさをもっとも強い説得力で表現した本だと思う。
これは1週目でも思ったことだけれども、僕にとっての一番の名シーンはパオロが既にこの世にいないであろう父・オーランドを思って泣くシーンですね。それまで数学・物理の描写をモリモリ盛り込み、決して人間味があるとはいえない文体で未来人を描写していたイーガンが、この小説で最終的に描く人間像がそういうものだというのはとても感動的で、人間賛歌的だと思う。ネットで感想見てて「人間が書けていないといわれるイーガンだが、」みたいな文章を読んだんですが本当にそんなこといわれてるんですか? この小説は僕が読んだ小説の中でもっとも人間の本質をうまく書いた小説だと思います。漫画とか映画とか含んでもトップ3には確実に入ります。
10点満点で文句なしに10点です。これよりすごい小説は今後死ぬまで10本出会えるかとかそういうレベルのものだと思います。

つーわけで『万延元年のフットボール』の2周目に入りました。冒頭20ページを読んだだけだけどとりあえず日本語の選択のキレがすごい。